2016-01-01から1年間の記事一覧

ベンヤミン「雑誌『新しい天使』の予告」を読む

ヴァルター・ベンヤミンは、1921年、『新しい天使』という名前の雑誌を構想していた。この名前は、同年彼が手に入れたパウル・クレーの絵からとられている。結局、この雑誌は実現しなかったのだが、ベンヤミンは、短くも密度の濃い予告文を残している。ベン…

新しいグーグル翻訳と翻訳者の失業

仕事が一段落したので、話題の新Google翻訳を試してみる。まずは古典的な例文を投入。上が入力、下が出力(以下同様)。 1) He saw a woman in the garden with a telescope. 彼は望遠鏡で庭の女性を見た。 おー。 2) He saw a woman with a hammer. 彼はハ…

こねこ文、あるいはシニフィアンとシニフィエの結合不良

互盛央「蓮實重彦のイマージュ、反イマージュの蓮實重彦」を読む。工藤庸子編『論集 蓮實重彦』に収められた文章のひとつで、蓮實重彦「「魂」の唯物論的な擁護にむけて」を主題的にとりあげている。この蓮實の論考、90年代の初め5号まで刊行された雑誌、ル…

「AIが翻訳の不可能性に気付く日」へのトラックバックのご紹介(追記あり)

「AIが翻訳の不可能性に気付く日 - 翻訳論その他」という以前のエントリにトラックバックいただいたのでご紹介しておきます。どっちも面白い。 少し前の「ちゃんとした自動翻訳はやっぱり無理じゃね?」という懐疑論も面白かった。 (AIに何ができるか、何を…

内包と外延――写真と俳句のシステム論的素描

畠山直哉の写真集『気仙川』の「あとがきにかえて」に「絶対的な写真」という言葉が出てくる。写真は、第三者が「写真として」みれば「どうということもない」ものであっても、それを撮影した本人には、個人の記憶とのつながりにおいて、この上なく大切なも…

「こなれた日本語」の弊害(追記あり)

こなれた日本語。って言い方? ありますよね。翻訳文について言われるやつ。まあ、誉め言葉。の一種。なのかしらん? 「来年度の日本のGNP成長率は四%前後になります」 という発言に対して、 「Oh, it's too optimistic!」 という反応があった場合、田中さ…

AIが翻訳の不可能性に気付く日

中央公論4月号で人工知能研究者の松尾豊氏が「ほんやくコンニャク」は「夢物語ではない」と書いている。「研究自体は5年〜10年で一定のメドがつき、10年〜15年後には実用化できるかもしれない」。じつは今から10年前、リアルタイム自動翻訳は「あと5年で実現…

「移人称小説」と「いぬのせなか座」

「移人称小説」というレッテルがピンと来なくて。命名したのは渡部直己だが、次のように書いている。 ここにひとつ、昨今の小説風土の一部にかかってなかなか興味深い(中略)現象がある。/一種の「ブーム」のごとく、キャリアも実力も異にする現代作家たち…