2022-01-01から1年間の記事一覧

音声中心主義と日本語

吉森佳奈子「「日本紀」による注――『河海抄』と契沖・真淵」も注意を促すところだが、本居宣長『源氏物語玉の小櫛』五の巻に次の記載がある。 花やかなる 河海に、声花(ハナヤカ)[白氏文集]とあり、すべて此物語のうち、詞の注に、かやうにからぶみ又は日…

「音位転換」ではない――「フインキ現象」についての一考察

「雰囲気」という言葉を「ふいんき」と発音する人がいる、という話がありますが、幸いにも(?)私は今日に至るまでそのような人にお会いしたことがありません。ただし急いで付け加えますが、私はこの言葉を文字通り「ふんいき」と発音する人にも会ったこと…

「棟方くんは夕方のひかりを浴びてこわい」――小説の地の文にたびたび現れる、人称制限を意に介さない文について

そういえば、「私は怖い」は「I am scared」で、「彼は怖い」は「he scares me」だというG氏のツイートへのリプライのひとつに、「『彼は怖い』を英語に翻訳するのなら『he scares me』よりむしろ『he is scary』なのでは?」というのがあって、これに対して…

「彼女は悲しい」は「she makes me sad」か?

これは後追いで知ったのだが、数日前、「Language learning influencer」を名乗るある人物のツイートが日本語学習者界隈をざわつかせた。SNS上では、その人の発言を肴に熱い議論が交わされており、なかにはずいぶん感情的なやりとりも見える。議論は匿名掲示…