2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

暗いバス通り――保坂和志「こことよそ」論(6)

大晦日、(中略)私は夜七時、駅から御成通り商店街を抜けてバス通りに出た、(中略)道は商店の明かりはなく街灯だけだから深夜のように暗い、(中略)笹目の停留所を過ぎると私はここを大学五年の元日、夕方六時すぎに家から駅に向かって逆向きに歩いてい…

暗いバス通り――保坂和志「こことよそ」論(5)

日の光の届かない、現世から切り離された穴底の、抽象空間のような舞台のような、そこには大晦日、夜、鎌倉のバス通りを駅から実家に向かって歩く六十歳の「私」の孤立した、鮮明な像があらわれている。この「私」は死んだ尾崎のお別れ会に出て以来、谷崎の…