2012-05-01から1ヶ月間の記事一覧

哲学の欺瞞性――國分功一郎『暇と退屈の倫理学』から考える

國分功一郎の『暇と退屈の倫理学』を読んで、「退屈の第三形式」をめぐる議論に興味を持った。國分によれば、ハイデッガーは『形而上学の根本諸概念』で「退屈」を次の通り三つの形式に分けている。(※以下、「ハイデッガーは」とあるのは「私の読んだところ…

声を水に流す――朝吹真理子『流跡』の話法について(後編)

(承前)朝吹真理子の小説『流跡』は、一見、次のような構成をとっている。「プロローグ」→「本編」→「エピローグ」つまり、一人の語り手がいて、その語り手が前口上を述べ、物語を語り出し、やがて語り終え、最後再び顔を出す。この場合、作品は2つの層から…