2014-01-01から1年間の記事一覧
妻のジュード・ロウVHSコレクションに『AI』があって観た。ジュード・ロウ演じるジゴロ・ジョーはセックス・ロボットだ。動きが少々ぎこちないけれど、見た目は人間と変わらない。当然、心もあるように見える。けれど、殺人の濡れ衣を着せられていた彼がラス…
最近アントワーヌ・ベルマンが国際哲学コレージュで行ったセミナーの記録が相次いで日本語に翻訳された。『翻訳の時代』と『翻訳の倫理学』である。読んでみたら、どちらも相当に面白かった。以下その感想のようなもの。まずは『翻訳の倫理学――彼方のものを…
二葉亭四迷といえば逐語訳であるけれど、「余が翻訳の標準」を素直に読めば、語数やコンマ、ピリオドを原文と同じくするという、「あひゞき」初訳で試みられた厳しい逐語訳の方法が、彼にとって最善のやり方ではなかったことがわかる。もし自分に筆力が備わ…
といふタイトルの小林秀雄のエッセイがある。萩原朔太郎の同名の文章について批判的に論じたものだが、なかにずいぶん気になる一節が見える。ちよつと引用してみたい。 原文の意味はとつくにわかつてゐるが、それがなかなか思ふ様に日本語の文章にならないと…
死ぬのがこわい、できれば死にたくないという人も、では永遠に死なないのがいいのかときかれれば即座に、それもごめんだと答えるのではないか。日々の暮らしの中で不意に襲ってくるタイプの死の恐怖、それについて語られたものをみると、「永遠に」だとか「…