2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

暗いバス通り――保坂和志「こことよそ」論(2)

この作品は、話者の「私」が年の暮れ、「谷崎潤一郎全集の月報にエッセイを書いてほしいという依頼」を受けたという話で幕をあける。「エッセイの趣旨は作品論的なものでなく個人的な思い出のようなものということだったから『細雪』のことを書こうかと思っ…

暗いバス通り――保坂和志「こことよそ」論

保坂和志の短編小説「こことよそ」は楕円形だ。独創的におかしな文が出てくる。保坂和志の作品に露骨におかしな文があらわれ始めたのが『未明の闘争』からだということをわたしたちは知っている。しかし、この長編に出てくる文のおかしさは、まだおとなしい…