2019-07-06から1日間の記事一覧

暗いバス通り――保坂和志「こことよそ」論(5)

日の光の届かない、現世から切り離された穴底の、抽象空間のような舞台のような、そこには大晦日、夜、鎌倉のバス通りを駅から実家に向かって歩く六十歳の「私」の孤立した、鮮明な像があらわれている。この「私」は死んだ尾崎のお別れ会に出て以来、谷崎の…